2ntブログ

ネトラレ彼女――彼女、抱かれてます――

 物陰で観察していた俺の目の前で、駅前の特大クリスマスツリーの傍らに並んでいた男女ふたりの顔が近づいていく。まるで、キスしようとしてるみたいに。
 それを見た瞬間、思わず飛び出しかけた俺だったが、「――って!」壁の出っ張りの部分に引っ掛かって無様に転んでしまう。呻きながらどうにか起き上がると、そんな俺を見つめる二つの視線の気配が。
 恐る恐るそちらに視線を向けてみると、並んでいた男女が同じ姿勢でこっちを見ていた。そして、チェックのマフラーがよく似合っている黒髪ロングの美女――水原が慌てたように声を張り上げてくる。
「あ、あなたっ! ここでなにを……!?」
「いっ、今キスを……」

 目にしたままの事実を告げると、水原は一瞬だけ目を泳がせるが、すぐにいつもの『あんたなに言ってんの?』モードになって、

「はっ、キス!? 私とうみくんが……!? あ、あれよ。ピアス直してもらってただけよ」
「だ、だってそいつは悪人で。恋人の水原を騙そうと……っ!」
「恋人!? なに言ってんの?」
「ちづるちゃん……知り合い?」
「えっ? あ、いや、この人は同じ大学の人で……」

 それまで彼女の隣で大人しくしていたイケメン――黒のコートとベレー帽が似合いすぎるのが実にムカつく――が割り込んできたのに、ちょっとキョドった感じで水原がしどろもどろに説明し出す。のを見て、俺は腹立ちのあまり声を張り上げてしまう。
 そりゃ俺は単なるレンカノのお客でたまたまアパートの部屋が隣で大学も一緒なだけのフツメンだよ。海くん? みたいに水原の隣に並んでも美男美女カップルに見えやしねーよ。そんなの解ってるけど、だからこそごまかされるのは我慢ならないんだよ――っ!

「彼氏じゃなかったらなんなんだよ!? 今日イブだぞ! そんなイケメンとデートなんておかしいだろ! 第一夜食のシチューがどうこうって……」
「なっ。あなた、どこから。……あれは……その」

 まずいところを突かれたのか、水原の態度が更に慌てたものに変わる。そんな彼女とは対照的にひどくのんびりとした調子で海くんが口を開いた。


「シチューって台本のこと?」
「う、海くん!」「だ、台本!?」


 うん、ゴメン。意味全然わかんないや。

「――台本って、どういう!? 水原っ!?」

 意味が解らないまま勢いで食いついてみる。すると水原は躊躇するようにしばらく唸り声を上げ続けてから、

「…………っ! ……私、女優なの」

 諦めたように口を開いた。本当は言いたくないのだと言いたげに、口を尖らせながら続ける。

「とは言ってもまだ“駆け出し”。アクターズスクールにはお金もかかるし、演技の練習にもなるから“レンカノ”やってるの。海くんはそのスクールの同期で“役者仲間”。今日は買い物のついでに課題の“本読み”付き合って貰っただけ」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ! じゃあ、さっきのトイレでの電話は!? 水原の声がどうこうって!」

 いい声出せるようになったとか、スリーサイズ調べるとか、いくらなんでも怪しすぎだろ。そう思って喚き立てる俺に、当の本人がのほほんと言ってくる。

「え? ああ。あれは知り合いの演出家にちづるちゃんのことをオススメしてただけだよ」
(演出家!? オススメぇ!? 全部、俺の勘違い……っ!?)

 頭がパニックになる。もしそれが本当なら――本当なのだろう、おそらくは。だって水原が女優なんてハマり過ぎなくらいハマってるんだから――とんでもない恥さらしだと。ショックを受けてしまった俺は、思わず側のベンチにへたり込んでしまっていた。
 そんな俺に水原は首を二、三度横に振ると、呆れたように声を掛けてくる。

「……ったく。ほんとバカね。飛び出してくるとかありえない。勘違いだったらって考えなかったの?」
「だって聞いちまったんだ。あのイケメンが水原のこと……まるでモノみてぇに話してんのを。水原が悪い男に騙されてんのかもって思ったら、俺ほっとけなくて」

 気づいたら体が勝手に動いてしまっていた。ホント、バカみたいだ。彼氏でもないのにいちいち詮索して、勘違いしてひとりでショック受けて、正義感ぶってみたらただの勇み足ときた。ホント自分でも呆れるくらいのただのバカだ。あー、穴があったら入りてぇ。
 彼氏じゃねぇって言ってたけど、クリスマスに出掛けるなんてお互い悪くは思ってねぇってことだよな。やっぱりああいうのが水原と付き合うんだろうな。察しろよ俺。結局また俺みたいなのは一人ぼっちなんだよな……

「……まったくなにを言ってるのよ。本当の彼氏でもないのに。――はいっ」

 少し頬を赤く染めながら水原はぶつくさ文句を言って。それから――なにかを俺の前に突き出してきた。包装紙に包まれたそれを渡されるまま受け取って戸惑う俺に、中を確かめるよう指示を出しながら微妙な早口で水原が続けてくる。

「海くん今日しか空いてなかったし、男物選ぶのは男の人の意見とかあった方がいいでしょ?」
「スマホ、ケース……?」

 包装紙を破って中を確かめると、渡されたのはどうやらスマホケースらしい。驚いて顔を向けると、マフラーで口元を隠しながらつっけんどんに言ってくる水原。

「だってあなた下田でスマホ壊してからケースも付けずに使ってるし、そのままじゃカッコ悪いじゃないっ!」
「水原……」
「プ、プレゼントとかじゃないから。お詫び。そう、お詫びだからっ」
「……ううっ……」

 スマホケースを眺めてる内に、勝手に涙がこぼれてきた。ヤバイ、なんかテンションがおかしなことになってる。全然涙が止まらねぇんだけど。

「ちょっと、なに泣いてんのよ! プレゼントじゃないって言ってるでしょっ!」
「ごめん。でも、俺クリスマスに女の子から物貰ったのなんて、生まれて初めてでっ……!」

 クズでバカでどうしようもない俺の人生だけど、もしかしたら水原のおかげで少しは色づけてるんじゃないかって――そう思ったら本当に涙が止まらなくなって。俺はそれからしばらくの間泣き続けてしまったのだ。
 そして。

「……えっと、そのゴメンな水原。それに、ええと海くんも。こんな長い時間くだらないことに付き合わせちゃって。てゆーか、すっげぇ恥ずかしかったよな。ホント、ゴメン」

 ようやく落ち着いた俺は、泣きやむまで付き合ってくれた水原と海くんに深々と頭を下げる。ちなみに場所はへたり込んでいたベンチからは移動していたり。……いや、ほら。さすがに泣いてるところ周りの人に見られまくってたから、そのままそこに居座るのって恥ずかしいわけで。その辺りは水原も海くんも同じらしく、むしろ二人もさっさとその場からは離れたいようだった。

「ホント、めちゃくちゃ恥ずかしかったわよ。正直一度だけで勘弁して欲しいわ。いい、次はないから今度は泣くときは一人で泣きなさいよ。わかった?」
「まぁまぁちづるちゃん。彼だって悪気があってやったわけじゃないんだろうし。広い心で許してあげようよ」

 頬を膨らませてぶーぶー言ってくる水原を、海くんが優しく取りなしてくれる。ホント、こういうところもイケメンだよな。俺も見習わないと……って、それが簡単にできるんなら苦労もなにもないんだけどな。
 とりあえず、改めて二人に謝罪とお礼をしてから俺はアパートに帰ることにした。水原と海くんはこの後用事があるとかでまだここに残るそうだ。一瞬、水原と一緒の電車で帰れるかと期待してしまったけど、どうやら現実はそこまで甘くないらしい。

「えっと。それじゃ、俺はこんなところで先に失礼させてもらうんで。今日は色々と迷惑掛けてホント申しわけないッス。それと水原、スマホケースありがとな。ぜってー大事にするから」
「だから、別にプレゼントじゃないって言ってるでしょっ。いいかげん勘違いするのやめてよね。相変わらずバカなんだから。……せいぜい大事にしなさいよ」

 顔を背けながら、それでも最後にぽつりと言ってくる水原に思わず頬をにやつかせてしまいながら、俺は二人に背を向けて駅へと向かうのだった。
 その帰り道。京王線に乗りながら、俺の表情は弛みまくってしまっている。にまにまとスマホケースを見つめ続けるキモメンの姿に周りの乗客はドン引きだったけれど、そんなもの気にならないくらいに俺のテンションは上がりまくっていたのだ。

(水原はお詫びって言ってたけど、普通に考えたらプレゼントだよなこれ。でもってクリスマスに貰ったんだから、ク、クリスマスプレゼントって考えてもいいよな)

 人生で初めて女の子から貰ったクリスマスプレゼント。それもあの水原から貰えたというのが思いきり嬉しい。もちろんあいつとは婆ちゃんの前なら兎も角、それ以外ならただのレンカノの顧客でしかないのは解ってる。
 けど、今回のことでもしかしたら――? な気分が芽生えたのも事実だった。そう、もしかしたら水原といい感じになれるんじゃないかと。冷静に考えたら水原が俺に好意を持ってくれてるなんて、まだまだそんなわけがないのも解っているけど。それでも水原との距離が少しは近づいてるんじゃないかと、そう思うには充分すぎる今日の出来事イベントだった。

(あー、やばいなー。今日は久しぶりに水原で抜いてみようか。なにげにスタイルもすごくいいんだよな。あのおっぱい揉んでみたいな)

 温泉での浴衣姿はめちゃくちゃ色っぽかったし、伊豆で見た水着ビキニも最高だった。どっちがいいかは迷うところだけど、水着の方が肌色成分多いから抜きやすいだろうか。いやでも浴衣のあの腰のラインとか胸元のチラ見せとかも捨てがたいし、どうすればいいのか?

(……って、別にどちらか片方に絞らなくても両方でヤればいいじゃん。どうせ水原をオカズにして一回で治まるはずもないんだし。うんうん、そうしよ。そう決めた)

 今夜の自家発電のオカズを決めると、吊り輪に掴まりながら俺は――楽しみのあまりに――にまにまとキモイ笑みを浮かべてしまうのだった。
 そして電車に揺られてる間に妄想は更に広がって、実際にセックスできたらなというところまで辿り着いてしまう。恋人になったらまずキスをして、キスをして、キスをして。そしてあの立派なおっぱいを揉みまくりたい。裸になってもらっておっぱいからオマンコからじっくり見まくって、それから思う存分触りまくって。そうして、できれば最後には水原のあの体で童貞を捨てられたら、と。股間をギンギンに膨らませてしまいながら、俺はひたすら妄想に耽ってしまうのだった。

 ――だから、俺は気づかなかった。
 その日、水原は結局アパートの隣の部屋に帰ってこなかったことに。
 後に残った水原と海くんの用事がなんだったのかということに。
 気づけなかったということに気づくことすらできなかったのだった。


            §     §     §


「えっと。それじゃ、俺はこんなところで先に失礼させてもらうんで。今日は色々と迷惑掛けてホント申しわけないッス。それと水原、スマホケースありがとな。ぜってー大事にするから」

 そう言って駅に向かうバカ――和也を見送って、私はやれやれと大きな息をついた。
 まさかこんなところで会うなんて思わなかったし、私が海くんに騙されてると勘違いして慌てて飛び出してくるなんて、相変わらずトラブルメーカーで勘違いしやすい大バカだけど――私のことを本気で心配してくれたのは伝わってきたから、怒るに怒れないのが正直言って腹立たしかった。……少し嬉しいなんて思ってしまったことも含めてだけど。

「……ま、渡しに行く手間が省けたのはよしとするか。プレゼントプレゼント喧しい上にあそこまで泣きまくるのは、正直辞めて欲しかったけど……」

 あのバカのスマホに傷が入ったのは私のせいでもあるわけだから。その罪悪感に駆られてしまったからスマホケースをあげただけなのに、あそこまで喜ばれると正直心苦しいを通り越して引いてしまう。その反応のありえなさを考えれば、渡したのがまだ知り合いのいないところ――海くんは仕方ないので省いて――だったのは良かったと、そう言えるのかもしれなかった。
 だから、むしろ問題があるとすればあのバカに私が女優をやってるのがバレたことと、海くんの存在を知られたことなのかもしれない。……まぁどうにかやり過ごすことはできたから、後は余計なヘマをしないように気をつければいいだけのはず。

(普通ならそれでいいんだけど、あのバカの場合本当に予測もつかないことやってくれちゃうからなぁ。それこそ今日みたいに。大人しくしてくれたらいいんだけど……しばらくは警戒しておいた方がいいわよね、やっぱり)

 そんな風に和也を見送った姿勢のままぼんやりと考えに耽っていると、横に進み出てきた海くんが同じように和也が去った方向を見つめながら聞いてくる。

「いいのかい、あんな説明で。彼、後でショック受けて寝込むことにならなきゃいいけど」
「いいのよ、あれで。別に嘘はついてないもの」

 どこか同情するような彼の言葉に、私はあえて素っ気なく返した。
 そう、嘘はついてない。
 私が駆け出しの女優をやっていることも。海くんとはアクターズスクールで一緒だってことも。そこになにひとつ嘘はない。
 ただ、本当のことを全部は話していないだけだ。そう、たとえば――

「彼がそう信じたなら彼にとってそれが真実。そういうものでしょ」

 私がそう言って話を終わらせると、海くんは「ふぅん」と気のない相槌を打って、

「まぁちづるちゃんがそれでいいのなら、ボクが口を挟むようなことでもないから構わないんだけどね。……さてと、それじゃこれからどうしよっか。予定だといつものコースだけど、今日は食事だけでホテルはなしにする?」

 そっと伸ばしてきた左手で私のお尻をスカートの上から撫で回してくる。私はその手を払いのけることもせず、その感触をただ気持ちいいものとして受け入れて感じながら口を開いた。

「……だめ。今日逃したらどうせまた間空いちゃうんでしょ。そんなの我慢できないもの。だから、今日もいつもどおりにしましょ」
「……了解。ちづるちゃんがいいならそうしよう。――それでは、参りましょうかお姫様」

 気取った仕草で腕を差し出してくる彼に思わず口元を緩めてしまいながら、私はその腕を取るとそのまま自分の腕を絡ませる。それから、恋人繋ぎの形で手を繋いだ。


 そう、たとえば――私と海くんがとっくに男と女の関係になってることとか。




「あっ、んむ……ちゅ……ぷはっ。んんっ……今日、いつもよりキスが強引じゃない?」
「え? そうかな? そんなつもりないんだけど。……イヤだった?」
「ううん。そんなことないよ。むしろ……嬉しい、かな」

 体は抱きしめ合ったままで唇だけを離すと、私は少しはにかんでそう答える。そんな私に海くんの方から再びキスをしてくると、その手がゆっくりと私の服を脱がし始めた。彼が作業しやすいように体を動かしながら、私も海くんの服を一緒に脱がし始める。
 ――ここはいつも使っているラブホテルの一室。入室して荷物を置いた途端いきなり抱き寄せられ、海くんからキスの嵐を受けたのだ。いつものように服を脱ぐことも、シャワーを浴びる暇さえもなく。そのことに若干の戸惑いと同量の喜びとを覚えながら、私は海くんのワイシャツのボタンを丁寧に外す。同時に私もブラウスを脱がされ上半身はブラだけになった。

「ちづるちゃん……? これって」
「ふふっ、驚いた? 折角のイブなんだからちょっと頑張って演出してみたの。……どうかな、興奮した?」

 言葉での返事の代わりに、海くんは情熱的なキスでその興奮の大きさを示してくれた。激しく舌を貪り合いながら彼の手が素早くスカートを脱がす。そうして私を下着だけの姿にすると、その長い指が下着の大きな隙間から乳首と膣口を弄り始めた。
 そんなことができるのは、今私が身につけているのがオープンブラとショーツという――ちなみに色は黒だ――ヤツで、中央の肝心な部分に穴が空いている下着だからだ。折角イブに海くんとセックスできるのだからと奮発してみたのだけど、結果は大成功だったみたい。
 荒い息のまま私をベッドに押し倒すと、左右の指で乳首とクリトリスを優しく弄ってくる。その両方からもたらされる快感に腰を浮かせてしまいながら、私は唇を離すことはせずに海くんのワイシャツを苦労しながら脱がせきった。ネックシャツだけの上半身になった彼はそっと唇を離して――不満で口を尖らせてしまった私の髪を優しく撫でると――、そのまま体を下に移動して両方の指でクリトリスとオマンコを刺激しながら、口は剥き出しの乳首を舐めてくる。

「――んん、あっ……。やだぁ、そんなの声出ちゃう――っ。ああっ、ん~~~」

 堪えきれず甘い声がどんどんと漏れてしまう。相変わらず海くんの愛撫は巧みで、私の体は簡単に感度を高められていってしまうのだ。

「すごいぐっしょりだよ。ちづるちゃん、そんなに弄って欲しかったんだ」
「やだ、そんな風に言わないでよ。それだと私が淫乱みたいじゃない。私はただ――んっ……、ただ海くんと早く繋がりたいなってそう思ってるだけなんだから。そりゃ、気持ちよくなりたいし、今だってすごく気持ちいいんだけど」

 言い訳をする私にくすりと微笑むと、海くんは一度体を起こしてネックシャツを脱ぎその引き締まった体を披露する。それから私の股間へと顔を寄せると、無言でクンニリングスを披露してくるのだった。
 長い舌が膣口を優しくなぞり、割れ目から奥に入り込んで肉襞を蹂躙してくる。優しく剥かれたクリトリスを繊細な指先が丁寧に扱いていく。そうしてどんどん溢れ出てくる愛液を啜る音が、じゅぶじゅぶと部屋中に大きく響き渡るのだった。

「ダメ、恥ずかしい。そんなに音立てないでって。あぁ――言ってるのに、海くんの意地悪っ。やだやだ。あっ、そこ感じちゃう。気持ちいいのっ。ああ~~~、あ゛、あ゛、あ゛、んんん~~~~っっっ!!!」

 海くんの巧みな舌技に私ははしたない声を出してしまいながら、腰を震わせてあっけなくイカされてしまう。ぜえぜえと荒い息を吐きながら、私は海くんを睨みつけた。
 もちろん気持ちよくしてくれるのは望むところだし、イクことができて満足している部分もあるけれど。一人で勝手にイカされたのは悔しいから、ちょっと仕返しをしてあげたい気分になったのだ。

「ん? えっと、ちづるちゃん。どうしたのかな? そんなに怖い顔をして……」
「音立てないでって言ってるのに、聞きもせずにそのままイカしてくれた海くんにちゃんとお返ししようかなって思ったの。あ、“仕返し”じゃなくて“お返し”だから。間違えないでよ」

 言いながら私は海くんを逆に押し倒すと、まずはズボンに手を掛けてさっさと脱がしてしまう。それから、ボクサーパンツの股間がすごく盛り上がってるのに思わず吐息を漏らしてしまいながら、パンツのウエスト部分に手を掛けてクイッと下に引っ張った。中の硬い棒に引っ掛かって止まったのを強引に引っ張り落とすと、弾けるように飛び出した大きなモノが私の頬に叩きつけられる。

「うわぁ、海くんすっごい元気だね。……そんなに私とできるの楽しみだった?」

 ギンギンに勃起しまくっている肉棒を目の前にして、私はうっとりと微笑みながらごくりと唾を飲んだ。指を絡めて上下に擦らせながら顔を近づけ臭いを嗅ぐ。途端に、むせ返るような男の淫臭が襲いかかってきた。その今日一日分の汗や色々なものの匂いが混じったそれを胸いっぱいに吸い込むと、背筋をぞくりと震わせながら私は臨戦態勢のオチンチンに舌を伸ばす。

「ん……んん……ちゅぱ。……んふ、すっごく硬くなってるね。もうビンビンなんだから♪ こんな立派なオチンチンで私をどうするつもりだったの?」
「んんっ……もちろん、ちづるちゃんのオマンコに挿入して、たっぷりと気持ちよくなってもらうつもりだよ」
「ふふっ、正直でよろしい。そんな正直者は御褒美として先にイカせてあげるわね」

 海くんの返事に満足した私はそのまま彼のモノを口いっぱいに頬張ると、舌を這わせながら喉の奥までゆっくり飲み込んでいく。他の人のは知らないから比べられないけど、私の口をいっぱいに埋め尽くしてくれるのだから、海くんのオチンチンはたぶん大きい方なのだろう。その大きな塊が口の中を満たしてくれることに悦びを覚えながら、私は精一杯の奉仕を捧げる。
 すると海くんは、私の髪を優しく撫でてくれながら――

「ああ、すごく気持ちいいよちづるちゃん。ホント、最初の頃に比べたらずいぶんとフェラ巧くなったよね。けど、シャワーも浴びてないのに大丈夫? 今日は一日中歩きっぱなしで、汗も大分かいてるから結構臭くなってると思うんだけど、無理してない?」
「んんっ……海くんのオチンチンだから大丈夫、無理してないよ。だって大好きな人のものだもん。それに、それを言うなら私だって同じくらい汗臭いはずでしょ。なのに海くんはいっぱい体を舐めてくれて――クンニまでしてくれたのはどうして?」
「もちろん、それはボクもちづるちゃんのことが大好きだからだよ。気の強いところも実は照れ屋なところも夢に向かって頑張ってるところも長い黒髪が似合ってるところもキスをするときに幸せそうに顔を蕩けてくれるところもオチンチンを挿れたら綺麗な声で啼いてくれるところも大好きだからさ――ああ、もちろんおっぱいが大きいところもね」
「そう言ってくれるのは……ちゅぱ、じゅる……すっごく嬉しいけど。でも、だったらどうして私を海くんの彼女にしてくれないの? ……ん、ううんっ」

 何度目かの問いを思わず口にしてしまう。……答えなんて解りきってるはずなのに。

「ごめんね、ボクだってちづるちゃんと恋人同士になりたいって思ってはいるんだよ。でもちづるちゃんが女優になるために頑張ってるのを邪魔するわけにはいかないよね。もしボクと付き合うことになったら、今やってるレンタル彼女の仕事だって上手くいかなくなるかもだし。だから、まずはちづるちゃんが女優になることを優先させた方がいいかなって」
「らったら、わらしがらゃんと女優になれたりゃ、その時はらゃんと付き合ってくりぇる?」

 相変わらずの変わらない答えに落胆を覚えながら。それでも私はオチンチンを口に含んだまま、色っぽい上目遣いを意識して問い掛けてみる。

「もちろん、早くその日がくるのを待ってるし応援もしてるから。ね、ちづるちゃん」
「ん、あひがと。頑張るかあ、待っへへね……」
(その日がくるのを待ってる、か。たぶん本気じゃないんだろうけど、私はそれを信じるしかないのよね。これも、惚れた弱みってやつなのかな。ああもう、ホント私バカだなぁ)

 与えられた答えを信じ切れなくても、それに縋り彼に媚びを売ることしかできない。そんな自分に自己嫌悪しながらも、私は海くんの肉棒を舌で扱き続けることを辞められない。
 ――あれは三年前、高校に入ってすぐの頃だ。夢だった女優を目指すために入ったアクターズスクールで、私は初めて海くんと会った。たぶん一目惚れだったと思う。勇気を出してこちらからアプローチを掛けて、夏の終わりには処女を捧げられるまで関係は進められた。
 それからの三年間で体を何度も何度も重ね合って、今では海くんの性感帯はすべて把握している自信はあるのだけど。彼とそういう関係を持っている女性ひとが他に何人もいることにも、いつしか気づいてしまっていた。それは私が海くんから離れるのに充分な事実だったはずだけど――結局私が選んだのはセフレの一人として彼との繋がりを維持することだった。
 理由は単純。その程度のことでは離れられなくなるくらい、私が海くんに――セックスも含めて――溺れてしまっていたからだ。愛は盲目を地でいく状況に自己嫌悪するときもあるのだけど、彼に会って体を重ねればそんな気持ちは結局吹き飛んでしまう。
 だから、せめてセフレの中でくらいは一番になれるように、海くんが私の体に溺れてしまうくらいにセックスの技術を磨くことしか私にできることはないのだ。

「んむ……ぢゅる、れろ……ふふ、ピクピクしてる。そろそろ射精したい? 射精していいよ。れろれろ……ちゅぱ……思いっきり私の口の中に射精して。お願い❤」

 裏筋の辺りを舌先で舐めあげながら、口内射精をイヤらしくおねだりしてみる。まるで風俗嬢みたいだなと思いながら、それでも海くんに少しでも興奮して欲しいから止められない。
 ピクピクしてるオチンチンの動きから射精寸前なのが解る。だから私はトドメを刺そうと裏筋に重点的に狙いをつけた。ここが海くんが一番弱いところだって知っているから。

「あ、もうイキそう。ちづるちゃん、イクよ。むぅ~~~~っっっ!!!」
「ん゛、ん゛ん゛、ん゛ん゛ん゛~~~~~っっっっっ!!!!!」

 断末魔みたいな震えと同時に爆発したように吹き出した精液が、一気に私の口の中に吐き出される。シャワーみたいな粘液の奔流を喉で全部受け止めると、私は少しずつそれを食道へと――わざと音を立てて――嚥下していった。喉を通りすぎていく液体の粘っこい感触とえぐい苦みを帯びた味に、静かな興奮を覚えてしまいながら。
 ――初めてフェラをした時は精液の匂いと味のひどさに吐き気さえ覚えてしまったものだけど、今ではむしろそのすべてが堪らなく好ましいものに変わってしまっている。好きな人の出したモノなのだから、一滴も残らず注いでほしいと思うくらいに病みつきになっているのだ。

(……これ、いつもよりもすごく濃い。よかった、他のとはしばらくヤってないみたいね……)

 いつもよりもどろりとしてる精液の濃さから、海くんが他のセフレとここしばらく――少なくとも今月は?――はセックスしてないだろうことが推測される。その事実に私は確かな喜びと微かな優越感を感じてしまっていた。
 そして、そんな風に精飲に耽る私の頭を海くんの手が褒めるように優しく撫でてくれる。その柔らかな感触を楽しみながら、私は最後まで口内のザーメンを飲み干した。
 それから――海くんの手で私はベッドの上に横たえられる。ブラもショーツもいつの間にか脱がされて、生まれたままのなにも身につけていない姿で。股間の女の穴からは甘い蜜がこぼれ落ちて、男の杭が埋め込まれるのをイヤらしく誘っている。
 繋がる準備は、すっかり整っていた。


「うん、そこ、気持ちいいからもっと弄って欲しいな。だぁめ、くすぐったいってば。海くんってばふざけないでよ。……あ、もう大きくなってきた」
「うん、そろそろいいかな。じゃ、ゴム取ってくるからちょっと待っててね、ちづるちゃん」

 思いきり搾り取ってしまったからか、さすがにすぐ使用可能になれるほど回復はしていない。だから私が半分くらいの大きさになった海くんのモノを手コキをしている間、隣で横になっている彼の指が私の全身を――主におっぱいやおヘソの辺りを――イヤらしくまさぐっていた。
 そうしてすぐにオチンチンを再びお腹につくくらいまで勃起させると、海くんはコンドームを取りにベッドから下りる。一方私は彼が戻ってくるのを待つ間に膝を立ててM字開脚状態にすると、指でびしょ濡れの膣口をくぱぁと開いて、挿入準備を――海くんへのアピールを兼ねて――整えてみた。

「お待たせ、ちづるちゃん。……どうしたのさ、思いきりイヤらしい格好しちゃって。もしかして、そんなにコレを挿れて欲しいんだ?」
「うん、そうなの。あなたのが欲しくてもう我慢できないんだ。海くんのその大きくなった硬いオチンチン、今すぐ私の膣内なかに挿れてちょうだい。一緒に気持ちよくなりたいの❤」

 彼を挑発するように淫らに笑ってみせると、勃起したオチンチンがピクリと跳ねるのが解った。海くんは一瞬戸惑った様子を見せたけれど、ゴクリと唾を飲み込むとその肉棒を一度手で擦りあげてから袋を破ってその中身を取り出し――慣れた手つきでコンドームをあっという間に根元まで被せてしまう。

「そこまでイヤらしい姿を見ちゃったら、女優は女優でもAV女優になっちゃうんじゃないかって不安になっちゃうけど。……うん、正直興奮してたまらないね。ボクも我慢できないから、今すぐハメてあげるよ」

 声を上擦らせながら私の上にのし掛かる体勢になると、海くんは手でオチンチンの位置を調節してオマンコの入口にぴたりと宛がった。それからゆっくりと腰が押し進められるとともに、オチンチンが割れ目を押し開いてずぶずぶと私の膣内に入ってくる。この柔肉を押し広げて硬いモノが入ってくる被征服感が、同時にひとつに繋がっているという感じを強く与えてくれるから、セックスでも私が一番好きな瞬間だった。

「あぁ~~~っっ。海くんの入ってきてる。コレがずっと欲しかったの。すごくいい、とっても気持ちいいの。ああ、海くんのオチンチン大好き❤」

 待ちに待った海くんとのセックスの快感を我慢できず、私はすぐにあられもない声を上げてしまう。そんな私とは対照的に海くんは無言でゆっくり焦らすように腰を動かしながら、私の首筋にキスの雨を降らせてきた。それもまるで私が海くんのモノだと証を刻むみたいに歯を立てて、キスマークがついてしまうくらいに強く。
 首元が隠れるようなトレーナーを着ればいいとか、マフラーでごまかせるとか対処手段が浮かんでは消えていくけれど、そんなことはどうでもよかった。キスマークを誰かに見られる危険よりも、海くんが私に向けて強い感情を向けてくれたのが嬉しかったから。
 それだけで気持ちはとても昂ぶってしまったから、後は海くんが普通にピストンし続けてくれるだけで気持ちよくイケるだろうと――そう思っていたのに。どうしてか海くんは途中で腰を動かすのを止めると、オマンコからオチンチンを引き抜いてしまうのだった。

「海、くん……? えっと、どうしたの? なにか、あった……?」

 突然の海くんの行動に、思わず戸惑い動きが止まってしまう。一体どうしたのか。なにか気に入らないことでもあったのか。もしかして、私の態度や言動が逆鱗に触れて(やりすぎて)しまったかなにかで彼のモノが萎えてしまったのかと――そんな恐怖感さえ抱いてしまうのだった。

(やだ、どうしよう。どうすれば……?)

 そうして戸惑い焦りパニックになりかけた私に対し、海くんは少し迷うような素振りを見せてから――私の方に向き直り、真剣な顔で――口を開いた。

「――あのさ、ちづるちゃん。ちょっとお願いがあるんだけど。生でしたくなっちゃったからさ、生で挿れてもいいかな?」
「……どうしてなの? 今まで妊娠はマズいからって必ずゴム付けるようにしてきたの、海くんの方なのに」

 その、思いがけない彼のお願いに私は驚きのあまり、素の状態で思わず聞き返してしまう。

「その、さ。和也くん――だっけ? 彼とのやり取り見てたら、ちづるちゃんは先にボクが手に入れたんだって証明したくなったっていうか。うん、そんな感じかな。ボクとの関係だって――そりゃ本当のことは話しづらいのかも知れないけど、あんな風にすぐ否定されちゃうとまるで彼に気があるみたいにも見えたからさ。だから、生でセックスして中出ししてちづるちゃんはボクのモノだって刻みつけたいなって。……ちょっと、自分勝手な話だけど」

 ちょっと照れくさそうに、そして申し訳なさそうに海くんが言ってくる。コンドームに包まれた――私の愛液もこびりついたままの――オチンチンは大きくしたままで。
 大好きな人の思いがけないお願いを聞いて、私は妊娠のリスクと海くんからお願いされた事実、それに生セックスへの好奇心を天秤に掛けてみる。……よく考えるまでもなく、天秤はすぐに片方に傾いてしまった。

「…………はぁ」

 ため息をつくと、私は勃起したままの海くんのオチンチンに手を伸ばす。それから、ゆっくりと掛かっているゴムを取り外した。その勢いで裸になった男性器がピクンと跳ね動く。

「ちづるちゃん、これって――!?」
「――仕方ないから、許してあげる。だって海くんが私にお願いなんてすごく珍しいし。和也とのこと嫉妬してくれたの、すごく嬉しかったから。……その代わり、もし万一のことがあったらちゃんと責任取ってくれる?」
「ああ、うん。約束するよ。でも、ホント嬉しいな。ちづるちゃんに中出しできるなんて」
(……『約束するよ』、か。これもどうせ嘘なんだろうな。きっと)

 諦めにも似た気持ちで、彼の言葉を受け止める。少なくとも、責任を積極的に取ろうと思うまでの存在になれてないのは、私自身よく解っていた。けれどそれでもいいのだと、ただの口約束でも構わないと、私のオンナの部分が言ってしまうのだから仕方がない。
 海くんは嬉しそうにニコニコしながら私を抱き寄せると、キスしながら軽く全身を愛撫してくる(もちろん、その間に私は彼のオチンチンを手で優しく刺激してあげている)。そして再びベッドに横たえられた私のオマンコに、海くんの生のオチンチンが宛がわれた。それが私の膣内に再び入り込むその前に、彼の目の前に手を突き出して挿入を一旦押し止める。
 生のオチンチンを挿れられてなにも考えられなくなる前に、海くんに話しておきたいことがあったから。

「あのね、確かに色々あったから和也のことが少し気になってるのは認めるわ。そうじゃないと、お詫びだからってあいつに物なんて買おうと思わないし」

 一応は命の恩人だし、大事なレンカノの顧客でもあるし、お婆ちゃんの前でだけとは言っても偽彼女でもあるから、あのバカとの縁を切るわけにいかないのも事実だ(そもそも部屋が隣なのだから、物理的に不可能だけど)。けれど、海くんと体の関係があることを和也に隠してしまったのは、きっとそれだけが理由じゃないのだろう。
 あいつは基本的にバカだしデリカシーないしトラブルばっかり引き起こす厄介者だけど。今日みたいに、海くんに騙されてると勘違いして飛び出してくるとか、お詫びだって言ってるのに初めて女の子からクリスマスにプレゼントされたとか言って泣き出したりとか、変にまっすぐなところがあるのが始末に負えない。特に、最近の私への態度は好意があからさま過ぎて、拒絶しようにも拒絶しきれなくなっていた――それがまるで海くんに対する私の姿を見てるみたいだから、勝手に自己投影してしまった挙げ句、無視することがどうしてもできなくなってしまったのだ。
 ……それが将来的に、好意にまで変わるかどうかは解らないけれど(たぶん、ないはず……だと思う)。

「でもね、私が初めて好きになったのは海くんだし。初めてキスをしたのも海くん。初めてデートをしたのも初めて裸を見せたのも初めてフェラチオをしたのも初めてパイズリしたのも初めてシックスナインしたのも初めてセックスしたのも全部海くんだよ。これから初めて中出しされるのも。だから私にとって一番特別な人は海くんだし、それは一生変わらないと思う。だから――海くんは安心してくれていいよ。もしもこの先和也とどうにかなることがあったとしても、海くんの方が私には大切なのは絶対に変わらないから。ね?」

 男の子はそうでもないらしいけど、女の子にとって初めての相手は本当に特別なんだから。たとえこの先なにがあろうと、海くんは私にとって掛け替えのない存在だとDNAそのものに書き込まれてしまっている。もう二度と消せないし消すつもりもない。だって私は――一ノ瀬ちづるは海くんのことがどうしようもなく大好きになってしまったんだから――
 その事実を海くんにも解って欲しくて、体を重ねる前に私はそう言葉を重ねるのだった。

「……和也くんとどうにかなる可能性を否定してくれないのは正直微妙な気分だけど、それでもちづるちゃんがボクのことを本当に大切に思ってくれてるのはすごく伝わってきたし、本当に嬉しいよ。だから――もう我慢できないから今すぐ生オチンチン挿れちゃうよ。いいね?」
「うん、今すぐ海くんの生オチンチン私のオマンコに挿れちゃって。もう待ちきれないの♪」

 複雑そうな顔をしながらも、それでも私の愛の言葉をちゃんと受け止めてくれたのか。辛抱溜まらなさそうに挿入を宣言してくる海くんに、私も我慢できずにおねだりしてしまう。
 そして、くちゅりという粘りを帯びた音とともに、海くんの生のオチンチンがゆっくりと私のオマンコに入ってくる。剥き出しの亀頭が肉の割れ目を押し開けて、逞しい肉棒が愛液で溢れかえった膣内へ少しずつ、ゆっくりと根元まで呑み込まれていくのだ。
 そうして私のヴァギナがペニス全体を受け入れた瞬間、

「あ~~~、嘘、なにこれ……やだ、こんなの、スゴ過ぎ~~~~~っっっ!!!」

 私は思わずあられもない声を上げ、同時にシーツを握りしめてしまう。それくらい強烈な快感が一気に押し寄せてきたのだ。オチンチンが膣内に入ってくる瞬間がセックスの中で一番好きな瞬間――私は今までそう考えていたけど、それが間違いだったと気づかされた。
 だって、生のオチンチンが挿れられる瞬間の気持ちよさは、それまで感じていた快感とは桁違いに素晴らしいものだったのだから。今までスゴイと思っていたものは大したことはなくて、もっとスゴイものがあったのだと教えてくれたのだ。たった数ミリの違いだけど、邪魔なゴムがあるのとないのとでは雲泥の差ということ。粘膜同士の直接の接触がもたらす本当の意味で繋がっていることの悦びを、私はようやく知ることができたのだった。
 例えるならそれは、今までキスと思っていたものが実はラップ越し――或いは鏡越し――にしていたものでしかなく、今になって本当のキスを――それも舌を激しく絡め合い唾を飲み合うような濃厚なモノを――味わっているようなもので。しかもその強烈過ぎる快感を挿入の間中ずっと、敏感になってるオマンコに与えられ続けてしまうのだから。我慢できずにイキまくってしまうのもあたりまえに決まっている。

(なにこれ本当にスゴイ、スゴ過ぎなんだけど。感触、全然違う。硬いのに内側擦られてるのがはっきり解ってたまらないよ。ああ、こんなの味わったらもう戻れない。アツいのが何度も何度も気持ちいいところ抉ってくるの。気持ちよすぎでしょ。アタマ、おかしくなる――)
「あ、ああ、ああん♪ ダメ、キちゃう。キちゃうから~❤ こんなの、感じすぎちゃうよ。ダメだよぉ、ダメになっちゃうから。あ、あ、あ~~~~~~、う゛~~~~~~っっ!!」

 言葉を出せないほど気持ちよくイカされてしまう。それでも海くんの腰の動きは止まらないから、すぐにまた快感が背筋を走り抜けて喘ぎ声が止められない。気づけば自分も夢中になって腰を動かしてしまいながら、彼の体にしがみついてキスを求め続けてしまう私がいた。

「んむ……ちゅぷ、ん~~~、ぷはぁっ。……あむ……ん、うぅん、もっと、もっと欲しいの」
「ふふ、ちづるちゃんのオマンコ、すごく締まってうねうねしてるよ。愛液もたっぷりで膣内がぐしょぐしょだし。そんなに気に入ってくれたんだ、生セックス」
「うん、そうなの。気持ちいいの。ホントすごい。生セックスってこんなに気持ちいいんだ。もう、こんなの夢中になっちゃうから――ああっスゴイの。感じちゃう」
「生セックスの気持ちよさ、これでちづるちゃんもよく解ったよね。だからこれからちづるちゃんとは、できればずっと生でしたいんだけどどうかな? もちろん、万一の時にはちゃんと責任取るからさ。いいでしょ?」
「うん。うん、いいよ。私も生がいい。だってこんなの気持ちよすぎるもの。……これからはちゃんとピル飲むようにするから、だから海くんの予定も教えて欲しいな。それに合わせて、いつでも中出しできるように計算するから。ね、お願い。私とずっと生セックスしようよ♪」

 ピル代の出費は正直痛いけれど、海くんとの生セックスには変えられない。こんな快楽を体に刻み込まれたら、もう妊娠への恐怖なんてどこかに吹き飛んでしまうから。受精してもいいから精液全部膣内に注ぎ込んで欲しいって本気で思ってしまう。
 そんな風に溺れてしまいかけてる私を、海くんの素敵なオチンチンが更に追い詰めてくる。一定のリズムを保ちながら、時折予想外のタイミングで奥まで深く突き込んでくるピストン運動に加えて、『の』の字を描くその動きが巧みすぎて、突かれるたびに淫らな声が勝手にこぼれ落ちてしまうのだ。
 ……体中がアツい。子宮だろうか、下腹部の辺りが子種を欲しがってきゅんきゅんと疼いている。すっかり全身が敏感になっていて、海くんの手が胸や乳首に触れるたびに背筋を電流が走り抜けた。そんな風に喘ぎ続ける私の唇を柔らかく大きな唇が塞いで舌を絡めてくる。甘いディープキスに脳髄まで震えを感じ、私はこれまで感じたことのない陶酔感に幸せな絶頂を迎えるのだった。

「ああ、またイッちゃう。ああっ、ああん、あ。ああぁぁぁぁぁぁ~~~~~っっっ!!!」
(こんなのダメだってば。気持ちよすぎるからぁ。ああ、イキ過ぎておかしくなりそう)

 理性がドロドロに溶けてしまっている。今ならなにをされても感じてしまうに違いない。なのに生のオチンチンが気持ちいいところを抉ってGスポットまで刺激してくるのだから、快感はもうとどまるところを知らなかった。
 そうして、もう狂ってしまうかと思ったその時になって、やっと膣内のオチンチンがビクビクと――射精寸前だと告げるように――震え始める。それを感じた瞬間、私の脚は勝手に――逃がすまいとするように――彼の腰に巻きついてしまっていた。それと同時に、破裂寸前のオチンチンが私の一番深いところにねじ込まれる。

「ああ、そろそろイクよ、ちづる。ボクの精液全部ちづるの膣内に射精してあげるから、キミはこれからもずっとボクのオンナってことだよ。それでいいね?」
「うん、いいよ。あなたの――海の精液、あるだけ全部私の膣内に注ぎ込んでちょうだい。私を――一ノ瀬ちづるを○○海のオンナにして欲しいの。だから射精して、いっぱい射精して、好きなだけ射精していいよ。私のオマンコいっぱいに中出しして~~~~っっっっ!!!!」

 これも生だからか。いつもよりもオチンチンが震える感覚がはっきりと感じられた。肉襞に包まれた肉棒が蠢く感覚に、私も腰を震わせながら射精の瞬間を待ち構える。海くんの愛の証を受け止めるために。

「出る、出るよっ。ちづる、イクよちづるっ! うぅっ――!!」
「いいよ、来て。海、海、海、来て海っ! あぁぁ~~~~~んんんっっっ!!!」

 深い絶頂とともに、水道管が破裂したような勢いで精液が膣奥に叩きつけられる。瞬間、体の一番奥まで男汁を注ぎ込まれた恍惚感エクスタシーで瞼の裏に火花が散って、頭の中が真っ白に染め上げられた。あまりにも極上過ぎる快感に、ビクンビクンと腰が跳ねてしまう。

(スゴい……精液、ホントに全部注ぎ込まれたみたい。きっと今、子宮の中で何万て精子が泳いでるんだよね。私の卵子と結びついて、受精するために)

 結合する瞬間をイメージしたのと同時に、子宮に甘い痺れが走った。まるでそのイメージが現実になるのを期待しているみたいに。
 ……現実にどうなるかは解らないけれど、避妊はしてないからそうなる可能性は充分にある。けれど、一番深いところまで染め上げられてしまったことで私の体は海くんのモノになったのだから、そうなっても仕方のないことだろう。背徳の悦びに打ち震えながら、私はそう思った。

「――――、……ちづる。大丈夫? 聞こえてる?」
「……? あ、うん。ゴメンね、海。どうしたの?」

 初の生セックスの余韻に浸っていたら、不意に海くんに呼びかけられる。どうしたのかと思って――繋がったまま――彼を見上げると、きまりが悪そうに頬を指で掻きながら――

「あー、その。射精したばかりでアレだけど。なんだかまだ治まらないみたいだから、このまま続けていいかな? ちづるが厳しそうならいいんだけど」

 二回戦をお願いしてきた。成程、確かに私の膣内にある彼のモノは大きなままで全然萎えていない。そのことに確かな悦びを感じながら、私は海くんに微笑みかける。

「私は全然大丈夫だから問題ないよ。ううん、むしろ私からもお願いしたいかな。もっと気持ちよくなりたいから、何度でも私と生セックスしてくれる? お・ね・が・い❤」
「もちろん、枯れるまで何度だってイカせてあげるよ。子宮がパンパンになるくらい注ぎ込んであげるから、覚悟してて」

 大量中出し宣言と同時に、私にキスしながらピストンを開始する海くん。その最初の一突きだけで喘いでしまいながら、私はこの後にやってくる快楽の嵐の予感に期待で胸を焦がしつつ、脚を彼の腰に絡ませるとともに全身をベッドの上で淫らに弾ませるのだった。


 そうして一晩中、私は朝が来るまでひたすらイカされ続けた。正常位、後背位だけじゃなく、騎乗位、側位、屈曲位、対面座位、背面座位、立位、立ちバック、あらゆる体位でイカされ続けた挙げ句、膣内に精液をたっぷり十回以上注ぎ込まれただろうか。そんな風に初めての生セックス、中出しがあんまり気持ちよすぎてトロトロになるまで全身を蕩かされてしまい、頭の中がセックスとオチンチン以外なにも考えられない状態になってしまったから――
 あまりにも、海くんとの中出しセックスが気持ちよすぎたから。あのバカのことなんて全部頭から抜け落ちてしまって、ただの一瞬たりとも思い出すことさえありはしなかったのだった。

                                                                     <了>

テーマ : 二次元総合 漫画・エロゲー・小説・エロアニメなど
ジャンル : アダルト

コメントの投稿

非公開コメント

検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR