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堕ちていく花(かのじょ)

2 宝多六花の校外セックス学習by担任教師

 Ⅰ 六花、誘う(上)

 空を見上げると、初夏に相応しい澄んだ青空に白い雲が幾つか浮かんでいる。そこから視線を下ろすと、目に入ってくるのは海――もとい、川の青色と波飛沫の白色だった。

「わぁぁぁ~~~っっ!!」
「ひゃっほ~~~っっっ!!!」

 そんな自然力に満ち溢れた光景の中、何組かの少年少女たちが乗り込んだラフトから賑やかな歓声が聞こえてくる。色とりどりの水着を着た高校生たちは、互いに水を掛け合ったりしながら、実に楽しそうにはしゃいでいた。

「おーい、おまえらーっ。はしゃぐのはいいけど、調子に乗りすぎて落っこちるなよー」

 川縁で生徒の様子を見守っていた彼は、川下りラフティングの真っ最中の面子の中にやや調子に乗りかけてる男子グループを見つけるなり、注意の声を掛ける。
 その声が届いたのか、勢いよく手を振り返してくる男子。その勢いのままバランスを崩して、危うく川に落ちかけたところを同乗の指導員に助けられ、無事事なきを得た。もう少しで川の藻屑となりかけた当の本人が周囲に一斉に囃し立てられる光景を見ながら、彼はそっと安堵の息を吐く。

(……まぁ、こんな程度のはしゃぎっぷりなら可愛いもんかな。この分なら、そこまで気を配らなくても良さそうなのは、ホント助かるよ……)

 少し緩くなりかけた腹を隠すように、ハーフパンツ型の水着を身に着けた三十代半ばの男。そんな男が高校生たちを見守っているのは、彼――土屋つちや孝幸たかゆきがツツジ台高校1年E組の担任教師であるからだ。
 今日は校外実習ということで、クラス全員電車で数駅離れた川まで行ってラフティングを体験する、というスケジュールになっていた。
 正直実習系の活動は面倒なので普段なら気は進まないが、今回は複数の指導員が生徒を見てくれるので楽ができて良い。なんなら、この初夏のくせに容赦ない暑さを水遊びで吹っ飛ばせるのも、充分な歓迎ポイントだろう。
 だが、今回の校外実習で土屋が一番愉しみにしているものは、それ以外にある。

「…………」

 それは、彼が無言で巡らせるその視線の先――それぞれに個性溢れるデザインや色合いで、男子や担任教師の目を楽しませている女子の水着姿が、その答えだった。

(さすが高校生。もう七割くらいはオトナのオンナって言ってもいいくらいだな。制服姿もいいけど、水着は身体の凹凸が正直に出るから教師としては目に毒、オトコとしては眼福なんだよな)

 そんな風に鼻の下を少し伸ばしニヤニヤしているところに、背中になにか柔らかいものが押しつけられる感触がしたと思うと、

「ねぇねぇ、ツッチーはウチらと一緒に遊ばないの?」

 背後から少しくぐもった声を掛かられる。
 背中に押しつけられたその――ふわふわと弾む――ゴム鞠のような感触を惜しみながらも、彼はむりやりそれから身体を引き剥がして、持ち主である少女をメガネ越しに睨みつけた。

蓮沼はすぬま~。ツッチーじゃなくて、土屋センセイと呼ぶようにって言ってるだろ。おまえたちがどう思ってるかは知らないが、これでも教師だからな。おまえたち全員を見とく必要があるから、一緒に遊ぶのはなし。わかったら、さっさと離れなさい」
「はいはい、土屋センセイ。わかりましたよー。……いいじゃんね、ツッチー。呼びやすくて」
「は・す・ぬ・ま?」
「あはは、はいはーい。ゴメンなさい、土屋センセーイ。これから気をつけま~す♪」

 ペロリと舌でも出してそうな口調だったが、マスクをしているのでその確認はできない。
 おかっぱにした黒髪に囲まれた顔はなかなか整っていそうだと、秘かにそう踏んでいる土屋だったが――救命胴衣まで付けてラフティングしているというのに――ずっとマスクを付けているため詳細ははっきりとは解らない。ただ、マスク越しに届く声は透き通っていて、なかなかに美しいのは事実だ。
 だが、なによりも特筆すべきなのは、グリーンのビキニに包まれたその豊満なボディだろう。
 クラス一の巨乳である新城しんじょうアカネ――残念ながら、今日は体調不良で欠席だ。もったいない――の陰に隠れて目立たないが、なかなかの巨乳の持ち主なのはその水着姿を見ただけでも明らかだ。水着越しだったとは言え背中に感じた感触もとても柔らかくて、生乳を揉みしだけたらきっと手に吸い付くような感じなんだろうと思わせてくれる。
 その破壊力は、生徒相手だからと理性を総動員中の土屋でさえ、危うく勃起しかけたほどだ。

(あー、念のためにと、大きめの水着を用意しておいて良かったな。これがぴったりのビキニパンツとかだったら、間違いなく勃起しかけたのがバレていたはずだ。ふぅ、桑原桑原)
「あーあ、バカじゃんはっす。センセーに怒られてやんの。……でもって、感触はどう?」
「うっさいなあなみこは。そんなこと言ってると、次の定例会はなみこだけはぶってやっから覚悟しときな。……うん、ばっちり反応アリ。後は本命さん次第ってとこだね」

 そんなマスク女子である蓮沼はすぬまらぶ――親しい者の間では「はっす」とよく呼ばれているようだ――は、土屋の叱責から逃げるようにその場を離れていく。そんな彼女に話しかけているのは、いつもよくつるんでいる友人の古橋ふるはし奈美子なみこだった。
 トランジスタグラマーな蓮沼の隣に並ぶと貧相に思えてしまうが、古橋もスタイル自体は悪くない。赤いセパレート型のワンピース水着に包まれた瑞々しいスレンダーボディは、それはそれで少女らしい魅力に溢れている。
 そんな二人を並べて犯してみるのも悪くなさそうだと――邪な妄想が浮かんでしまい、土屋は慌てて首をぶるぶる振ってその妄想を打ち消した。

(っと、ヤバいヤバい。女子の水着姿が目に保養すぎて、思わず色々と妄想したくなるけど、バレないよう程々にしとかないとな。本命の新城がいないのが残念だけど、まぁウチのクラスはレベルが高いの多いし、対抗の宝多はちゃんと来てるから問題はないんだが……)

 折角の上玉JKの水着姿だ。本当なら存分に愉しみたいところだが、淫行教師と噂されるのはさすがに避けたい。だから土屋は周囲にバレないようにこっそりと、少女たちの水着姿を目だけで愉しんでいるのだった。
 そして、次の目標ターゲットを見つけようと視線をあちこちに巡らせていたところへ、黒いポニーテールを目の端に捉えた瞬間に視線を固定させる。

「おーい、はっすってばーっ。結局どうするわけ? もう一回乗せてもらうの? それとも、もうやめとくの? どっちだよーっ」

 そこには、少し離れた位置から蓮沼に声を掛ける少女がいた。
 普段はまっすぐ流している長い黒髪を、今はポニーで後ろにまとめて。黒と青白の縞柄とを組み合わせたタイプのビキニに包まれた、その見事な身体スタイルを表現するとしたらさしずめ、ポムッキュッボンと言ったところか。
 胸こそ蓮沼に若干大きさでは劣っているが、その分下半身の肉付きが極上で。そのスタイルの良さは制服の時から窺えたが、こうして水着になるとひときわ際立っている。
 そんな高校生離れした肢体の持ち主こそが、クラスで男子人気を新城アカネと二分しているクール系美少女、宝多たからだ六花りっかだった。

(……蓮沼のおっぱいもいいけど、やっぱり全体的には間違いなく宝多の方が上だよな。あーあ、男子たちもめちゃくちゃ食いついてるな。気づかれてないつもりでも、傍から見ればバレバレだぞー)

 ちらちらと六花の胸やお尻を横目で見ている男子たちに微笑ましさを感じ、思わず上から目線で生温かく見守ってしまう土屋。もっとも、そんな彼も同じように六花の水着姿を視姦してしまっているわけだが。
 そんな風に野獣おとこの視線が彼女に集まってしまうのも、無理のないことではある。――なにせ、最近の六花はそれこそ全身から、匂い立つような色香を発しているのだから。
 元々大人びた雰囲気を持っていた少女だったが、最近になってその傾向が顕著になったように思える。蛹から脱皮して蝶になったように、一気に少女から大人の女に生まれ変わったような、そんな変化を感じるのだ。
 そう、まるでよからぬ男たちの手で貞操しょじょを奪われて、大人のカラダに造り変えられたみたいに――

「――センセイ、大丈夫? さっきからぼーっとしちゃってるみたいだけど、熱中症とかじゃないですよね?」
「――――っ!? お、おぉ……?」

 頭の中に浮かび上がった淫らな映像に引き込まれていたところに、不意に声を掛けられた土屋はそこでようやく現実に戻ってきた。
 平静を装いつつメガネを弄くって動揺を押し殺すと、担任教師は声を掛けてきた生徒――さっきまで脳内で痴態を繰り広げさせていた――六花に向き直る。

「ああ、いや大丈夫。ちょっと考え事してただけだから、先生の体調はなんの問題もないぞ。心配してくれてありがとな、宝多」

 軽く笑いながらごまかすと、彼はそれ以上余計な追及をされないために矛先を変えることにした。

「そう言う宝多の方はどうだ。体調は問題ないか? 気をつけてるつもりでも、この暑さだからな。なにかの拍子で急に体調を崩すこともあるから、少しでもおかしいと思ったらすぐ先生に言うようにしてくれよ」
「はいはい、そうしますねー。あ、私の方も特に問題はないですよ。――今のところは、ですけど」

 最後の部分を意味ありげに区切るように軽い調子で言いながら、なぜか六花がぴったりと身体を寄せてくる。視線を下に向ければ、すぐそばに深い胸の谷間が見えるくらい、すぐ近くに。ゼロ距離からもたらされる女子高生の甘い匂いと、柔らかい肌の感触に股間が反応するのを必死に我慢して堪えながら、彼はただ続きの言葉を待った。
 そして。

「でも、もう少ししたら体調崩しちゃうかもしれないから――」

 土屋の腕に――まるで恋人同士がするように――自分の腕を絡めると、彼の裸の胸板にわざと水着に包まれた胸を押しつけながら、耳元に唇を近づけそっと囁いてくる六花。

「昼休憩の時ですけど。食事が終わったら、救護室に一人で来てもらえますか? 私も、一人で待ってますから」

 耳をくすぐる、その蠱惑的な囁き声に、とうとう水着の中で完全勃起させてしまう土屋だった。

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